Web Syllabus(講義概要)
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量子化学Ⅰ
英文名Quantum Chemistry Ⅰ
科目概要化学科 2年 3群科目 必修 2単位 後期 15 コマ 講義 週1コマ
物理学科 3年 3群科目 B選択 2単位 後期 15 コマ 講義 週1コマ
科目責任者水瀬 賢太
担当者水瀬 賢太
備考科目ナンバリング:SC301-CP22
科目ナンバリング:SP301-Ch31

教員免許取得のための必修科目

科目教科に関する専門的事項(中・高 理科)
施行規則に定める科目区分
  • 化学

授業の目的

量子化学という学問は分子の構造や物性、化学現象を量子力学的に即して理解するためのものである。本科目では、物理化学IIで学んだ量子化学的考え方を発展させ、分子の成り立ちや変換(化学反応)に関わる化学結合について、その実態である電子の量子力学的振る舞い(分子軌道)をもとに記述する方法を学ぶ。分子構造や化学反応を量子化学の視点で理解するための基礎を習得することが目的である。

DPとの関連

SG1SG2SP1SC1SC2

教育内容

前半は、原子の電子構造を理解するための量子力学を学ぶ。Bohrの原子模型と水素原子のスペクトル線,原子単位,物質波,シュレディンガー方程式,固有値方程式,エルミート演算子と波動関数の規格直交性,交換関係と不確定性の原理,水素原子の波動関数(動径関数と動径節,角関数と軌道角運動量),スピン量子数,多電子原子の項状態(ラッセル・ソンダーズ結合)が主なキーワードである。後半は、近似的手法である変分法と分子軌道理論について学ぶ。変分の原理とヘリウム原子のエネルギー,LCAO近似と水素分子のエネルギーと波動関数,二原子分子の分子軌道とその特性(結合性軌道と反結合性軌道),結合次数,π共役分子のヒュッケル分子軌道が主なキーワードである。

教育方法

スライドを主体とし、適宜書き込みを加えて説明を行う。毎週予習復習のための課題を課す。

授業内容

項目内容
1導入 講義全体の目的、概要を説明するとともに、物質科学における量子化学の重要性について、研究例を挙げて説明する。また、水素原子の量子力学的扱いについて確認する。
2原子軌道1分子軌道の基底となる原子軌道について基本的な扱い方を学ぶ。
3原子軌道2多電子原子の原子軌道について学ぶ。その過程で、電子スピン、パウリの排他原理、スレーター行列式といった重要項目を学ぶ。
4量子化学における近似法1量子化学で用いられるシュレーディンガー方程式の近似解法、特に変分法と摂動論について学ぶ。
5量子化学における近似法2分子系のシュレーディンガー方程式を扱う上で実用上よく用いられるボルンオッペンハイマー近似と、ハートリーフォック法について概要を学ぶ。
6二原子分子の化学結合論1水素分子イオンを対象に、量子化学的な化学結合の扱い方の基礎を学ぶ。LCAO-MO近似、クーロン積分、共鳴積分とは何か学ぶ。
7二原子分子の化学結合論2水素分子の量子化学的扱いを学ぶ。結合性・反結合性軌道や1重項・3重項の考え方について学ぶ。
8二原子分子の化学結合論3第2周期元素を含む二原子分子の化学結合について学ぶ。軌道形状の概形、電子配置を理解するとともに、結合の強さや磁性との関係性、異核二原子分子の極性の傾向について説明できるようにする。
9三原子分子の化学結合論と分子構造簡単な三原子分子を題材に、混成軌道の概念と、化学結合論に基づく分子構造の考察について学ぶ。
10π共役系の化学結合論多くの分子系に含まれるπ共役系や芳香環の化学結合論について、π電子近似、ヒュッケル分子軌道法に基づいてその特徴を理解する。
11様々な結合の量子論配位結合、3中心結合、水素結合といった特殊な相互作用の扱い方について学ぶ
12分子軌道と反応性分子軌道の形状やHOMOとLUMOの軌道エネルギーに基づいて分子の安定性や反応性を議論する方法を学ぶ。
13分子軌道と電子分光化学結合の量子論的扱いによって電子分光の実験データを説明できることを学ぶ。分子軌道の観測に関する実験研究を紹介する。
14より高度な分子軌道法多くの原子からなる分子系のシュレーディンガー方程式を高い精度で解くために用いられている方法論の概要を学び、高学年科目や研究の現場で行われている量子化学の研究例に触れる。
15まとめ全体の確認と復習。
No. 1
項目
導入
内容
講義全体の目的、概要を説明するとともに、物質科学における量子化学の重要性について、研究例を挙げて説明する。また、水素原子の量子力学的扱いについて確認する。
No. 2
項目
原子軌道1
内容
分子軌道の基底となる原子軌道について基本的な扱い方を学ぶ。
No. 3
項目
原子軌道2
内容
多電子原子の原子軌道について学ぶ。その過程で、電子スピン、パウリの排他原理、スレーター行列式といった重要項目を学ぶ。
No. 4
項目
量子化学における近似法1
内容
量子化学で用いられるシュレーディンガー方程式の近似解法、特に変分法と摂動論について学ぶ。
No. 5
項目
量子化学における近似法2
内容
分子系のシュレーディンガー方程式を扱う上で実用上よく用いられるボルンオッペンハイマー近似と、ハートリーフォック法について概要を学ぶ。
No. 6
項目
二原子分子の化学結合論1
内容
水素分子イオンを対象に、量子化学的な化学結合の扱い方の基礎を学ぶ。LCAO-MO近似、クーロン積分、共鳴積分とは何か学ぶ。
No. 7
項目
二原子分子の化学結合論2
内容
水素分子の量子化学的扱いを学ぶ。結合性・反結合性軌道や1重項・3重項の考え方について学ぶ。
No. 8
項目
二原子分子の化学結合論3
内容
第2周期元素を含む二原子分子の化学結合について学ぶ。軌道形状の概形、電子配置を理解するとともに、結合の強さや磁性との関係性、異核二原子分子の極性の傾向について説明できるようにする。
No. 9
項目
三原子分子の化学結合論と分子構造
内容
簡単な三原子分子を題材に、混成軌道の概念と、化学結合論に基づく分子構造の考察について学ぶ。
No. 10
項目
π共役系の化学結合論
内容
多くの分子系に含まれるπ共役系や芳香環の化学結合論について、π電子近似、ヒュッケル分子軌道法に基づいてその特徴を理解する。
No. 11
項目
様々な結合の量子論
内容
配位結合、3中心結合、水素結合といった特殊な相互作用の扱い方について学ぶ
No. 12
項目
分子軌道と反応性
内容
分子軌道の形状やHOMOとLUMOの軌道エネルギーに基づいて分子の安定性や反応性を議論する方法を学ぶ。
No. 13
項目
分子軌道と電子分光
内容
化学結合の量子論的扱いによって電子分光の実験データを説明できることを学ぶ。分子軌道の観測に関する実験研究を紹介する。
No. 14
項目
より高度な分子軌道法
内容
多くの原子からなる分子系のシュレーディンガー方程式を高い精度で解くために用いられている方法論の概要を学び、高学年科目や研究の現場で行われている量子化学の研究例に触れる。
No. 15
項目
まとめ
内容
全体の確認と復習。

到達目標

分子の成り立ちや変換に直接関わる化学結合について、その実態である電子の量子力学的振る舞い(分子軌道)をもとに記述できるようになる。分子軌道と軌道エネルギーに基づいて基本的な分子の物性を説明できるようになる。

評価基準

評価は試験 (70%) 、課題 (30%) で行う。

準備学習(予習・復習)

【授業時間外に必要な学習時間:毎回4時間、合計60時間】
予習復習のための課題と練習問題を配布する。講義資料や参考書を参照しながら取り組みこと。課題は指示する締切までに提出すること。

実務経験のある教員情報

文部科学省管轄の研究機関で分子系の量子ダイナミクスに関する研究を行った経験をもとに、分子軌道観測に関する最新の知見をもとに講義する。また、関連する実験の詳細について解説する。

関連科目

物理化学概論,基礎物理学,物理化学Ⅱ,物理化学演習,分子構造学,量子力学I, Ⅱ

その他

課題へのフィードバックは講義中またはClassroomで行う。教科書は指定しないが、講義に関連する参考書を最低1冊手元において履修することを推奨する。関連する参考書については講義でも紹介する。

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書なし
参考書マッカーリ・サイモン 物理化学(上)マッカーリ、サイモン東京化学同人
参考書量子化学大野公一岩波書店
参考書量子化学 基礎からのアプローチ真船 文隆 化学同人
参考書アトキンス 物理化学(上)P. W. Atkins東京化学同人
教科書
署名
なし
著者・編者
発行所
参考書
署名
マッカーリ・サイモン 物理化学(上)
著者・編者
マッカーリ、サイモン
発行所
東京化学同人
参考書
署名
量子化学
著者・編者
大野公一
発行所
岩波書店
参考書
署名
量子化学 基礎からのアプローチ
著者・編者
真船 文隆
発行所
化学同人
参考書
署名
アトキンス 物理化学(上)
著者・編者
P. W. Atkins
発行所
東京化学同人