Web Syllabus(講義概要)
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有機光化学
英文名Organic Photochemistry
科目概要化学科 3年 3群科目 A選択 2単位 後期 15 コマ 講義 週1コマ
科目責任者末吉 健志
担当者末吉 健志
備考科目ナンバリング:SC301-CP34

授業の目的

照明器具、スマートフォンやテレビ・PC などの画面、太陽電池など、光化学は我々の生活に大きな関わりをもっている。また光合成や生物発光など光に関連する生命現象も多い。本講義では、光吸収や発光、光電子移動などの物理現象を量子化学に基づいて理解するとともに、光による生命現象、光を用いた様々な研究トピック、光化学を応用した工業分野について学ぶことによって、「光化学」分野に興味をもってもらうことを目的とする。

DPとの関連

SG2SG3SC1SC2SC3

教育内容

光とはなにか、光と物質との相互作用などの基礎理論から、光励起に関係する諸過程と引き続き起こる重要な現象について理解を深める。また光化学を応用した分野として、光を用いた生物学研究、発光材料、太陽電池、光触媒、バイオイメージングなどについて学習する。

教育方法

各項目について、配布プリントに基づいて講義を進める。講義中にでてくるキーワード(学習項目)について、受講者間でディスカッションする、自身で長鎖するなどアクティブラーニングを行う。

授業内容

項目内容担当者
1イントロダクション:概説光化学とは何かについて俯瞰的に概観する。基本的かつ重要な要素や留意点について述べる。末吉 健志
2現代の光化学研究の歴史現代の光化学の発展の歴史を関係するノーベル賞受賞者の業績に触れながら解説する。末吉 健志
3光吸収の理論光化学の最も基本となる光吸収について、アインシュタイン係数、分子吸光係数、振動子強度、選択則について数式を交えながら解説する。誘導放射の関連でレーザーの原理にも触れる。末吉 健志
4光化学の基本プロセス光化学の基礎過程に関連するジャブロンスキー図を用いて励起状態のダイナミクスを解説する。スピン多重度、蛍光、リン光、無輻射遷移、内部転換、項間交差、Kasha 則、El-Sayd 則などについて学ぶ。末吉 健志
5光化学研究方法主として光化学を研究する手段として様々な装置、手法について解説する。光源、センサ、分光器などの部分的な装置を解説した後、レーザーフォトリシス、寿命測定、量子収率測定について解説する。また、Stern-Volmer の式を紹介する。末吉 健志
6エネルギー移動蛍光測定を用いてエネルギー移動反応(FRET)を研究する方法を紹介する。蛍光スペクトル、蛍光励起スペクトルの測定、ストークスシフト、増感剤、消光剤について解説するほか、ケミカルライト(サイリウム)を例にとって具体的な化学反応を紹介する。末吉 健志
7エネルギー移動(続き)とエキシマー前半ではフェルスターの理論を用いたFRET 効率の計算方法を紹介する。後半ではエキシマーやエキシプレックスといった励起錯体を生成する光化学反応について紹介する。末吉 健志
8有機光化学の重要な光化学反応最初に光化学でよく用いられる溶媒について解説する。
続いてカルボニル化合物、アゾベンゼンといった光化学で詳しい研究の進んでいる物質を用いた反応系とそのダイナミクスを解説し、溶液化学や生物化学に関連した研究成果に触れる。
末吉 健志
9生物に学ぶ光化学反応生物の中での光化学的cis-trans 互変異性の重要性を学ぶためにレチナールを含んだロドプシンタンパク質の挙動を解説する。また無色-着色の変化を示すフォトクロミズムについて解説する。末吉 健志
10無機化合物の光化学動物や植物の重要な場所に存在するポルフィリンについて紹介し、その応用と光合成中心における役割について解説する。またルテニウム錯体の特殊な光化学特性を紹介し光触媒反応に用いられていることを解説する。末吉 健志
11半導体を使った光化学半導体の光特性について学び、酸化チタンを用いた本多-藤嶋効果について紹介する。また、これらを用いた応用として、半導体微粒子、光触媒による空気や水の浄化について紹介する。また湿式太陽電池や有機エレクトロルミネッセンス材料への展開を述べる。末吉 健志
12化学発光と蛍光のバイオ系への応用ルミノールなどを用いた化学発光を紹介し、これが活性酸素の同定に用いられていることを学ぶ。また様々なバイオプローブとしての蛍光分子を紹介し走査型レーザー顕微鏡の原理を解説する。末吉 健志
13大気の光化学塩素原子の連鎖反応によるオゾン層破壊や、温室効果による地球温暖化についての光化学の関わりを紹介し、今環境に対してどのようなモニタリングが行われているかを学ぶ末吉 健志
14光化学で化学反応をあやつるウッドワードホフマン則を紹介し、光化学を用いると生成物の立体化学が制御できることを理論的に学ぶ。また電荷移動錯体を用いて選択性のある特殊な光化学反応を起こす手法について紹介する。末吉 健志
15総合演習重要な点を解説し、毎回の授業に提供した演習問題を通して、学んできた内容を整理し理解を深める。末吉 健志
No. 1
項目
イントロダクション:概説
内容
光化学とは何かについて俯瞰的に概観する。基本的かつ重要な要素や留意点について述べる。
担当者
末吉 健志
No. 2
項目
現代の光化学研究の歴史
内容
現代の光化学の発展の歴史を関係するノーベル賞受賞者の業績に触れながら解説する。
担当者
末吉 健志
No. 3
項目
光吸収の理論
内容
光化学の最も基本となる光吸収について、アインシュタイン係数、分子吸光係数、振動子強度、選択則について数式を交えながら解説する。誘導放射の関連でレーザーの原理にも触れる。
担当者
末吉 健志
No. 4
項目
光化学の基本プロセス
内容
光化学の基礎過程に関連するジャブロンスキー図を用いて励起状態のダイナミクスを解説する。スピン多重度、蛍光、リン光、無輻射遷移、内部転換、項間交差、Kasha 則、El-Sayd 則などについて学ぶ。
担当者
末吉 健志
No. 5
項目
光化学研究方法
内容
主として光化学を研究する手段として様々な装置、手法について解説する。光源、センサ、分光器などの部分的な装置を解説した後、レーザーフォトリシス、寿命測定、量子収率測定について解説する。また、Stern-Volmer の式を紹介する。
担当者
末吉 健志
No. 6
項目
エネルギー移動
内容
蛍光測定を用いてエネルギー移動反応(FRET)を研究する方法を紹介する。蛍光スペクトル、蛍光励起スペクトルの測定、ストークスシフト、増感剤、消光剤について解説するほか、ケミカルライト(サイリウム)を例にとって具体的な化学反応を紹介する。
担当者
末吉 健志
No. 7
項目
エネルギー移動(続き)とエキシマー
内容
前半ではフェルスターの理論を用いたFRET 効率の計算方法を紹介する。後半ではエキシマーやエキシプレックスといった励起錯体を生成する光化学反応について紹介する。
担当者
末吉 健志
No. 8
項目
有機光化学の重要な光化学反応
内容
最初に光化学でよく用いられる溶媒について解説する。
続いてカルボニル化合物、アゾベンゼンといった光化学で詳しい研究の進んでいる物質を用いた反応系とそのダイナミクスを解説し、溶液化学や生物化学に関連した研究成果に触れる。
担当者
末吉 健志
No. 9
項目
生物に学ぶ光化学反応
内容
生物の中での光化学的cis-trans 互変異性の重要性を学ぶためにレチナールを含んだロドプシンタンパク質の挙動を解説する。また無色-着色の変化を示すフォトクロミズムについて解説する。
担当者
末吉 健志
No. 10
項目
無機化合物の光化学
内容
動物や植物の重要な場所に存在するポルフィリンについて紹介し、その応用と光合成中心における役割について解説する。またルテニウム錯体の特殊な光化学特性を紹介し光触媒反応に用いられていることを解説する。
担当者
末吉 健志
No. 11
項目
半導体を使った光化学
内容
半導体の光特性について学び、酸化チタンを用いた本多-藤嶋効果について紹介する。また、これらを用いた応用として、半導体微粒子、光触媒による空気や水の浄化について紹介する。また湿式太陽電池や有機エレクトロルミネッセンス材料への展開を述べる。
担当者
末吉 健志
No. 12
項目
化学発光と蛍光のバイオ系への応用
内容
ルミノールなどを用いた化学発光を紹介し、これが活性酸素の同定に用いられていることを学ぶ。また様々なバイオプローブとしての蛍光分子を紹介し走査型レーザー顕微鏡の原理を解説する。
担当者
末吉 健志
No. 13
項目
大気の光化学
内容
塩素原子の連鎖反応によるオゾン層破壊や、温室効果による地球温暖化についての光化学の関わりを紹介し、今環境に対してどのようなモニタリングが行われているかを学ぶ
担当者
末吉 健志
No. 14
項目
光化学で化学反応をあやつる
内容
ウッドワードホフマン則を紹介し、光化学を用いると生成物の立体化学が制御できることを理論的に学ぶ。また電荷移動錯体を用いて選択性のある特殊な光化学反応を起こす手法について紹介する。
担当者
末吉 健志
No. 15
項目
総合演習
内容
重要な点を解説し、毎回の授業に提供した演習問題を通して、学んできた内容を整理し理解を深める。
担当者
末吉 健志

到達目標

これまでも量子化学を学んできたが、光の吸収や発光といった身近な現象が量子化学の知識で説明できることを経験し、量子化学への理解をより深める。スマートフォンの画面や太陽電池、光触媒など、光化学が身の回りの様々な分野で応用されていること、さらには光合成や生物発光などの自然現象に対しても理解を深める。

評価基準

光化学に関連する基礎的な知識や応用分野への理解を問う試験(本試験)を行い、その成績を基に評価する(90%)。また、毎回行う確認テストへの取り組み方についても評価の対象とする(10%)。

準備学習(予習・復習)

【授業時間外に必要な学習時間:2 時間(予習と下調べ)+ 2 時間(復習と発展学習)】
プリントの該当部分を予習して講義に臨むことが望ましい(2 時間程度)。特に講義後に、学習した項目のキーワードを整理し、復習することが重要である。(2 時間程度)

実務経験のある教員情報

該当教員なし

関連科目

反応機構学Ⅰ、反応機構学Ⅱ、機器分析学、量子化学、物理化学Ⅱ、物理化学Ⅲ

その他

毎時間簡単な設問を配布し、その次の回に簡単に説明する。

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書(なし)
参考書光化学 基礎から応用まで長村利彦/川井秀記講談社サイエンティフィック
参考書光化学〈1〉( 基礎化学コース)井上 晴夫 他丸善
教科書
署名
著者・編者
発行所
参考書
署名
光化学 基礎から応用まで
著者・編者
長村利彦/川井秀記
発行所
講談社サイエンティフィック
参考書
署名
光化学〈1〉( 基礎化学コース)
著者・編者
井上 晴夫 他
発行所
丸善